【建設業】一人親方の視点で考える!インボイス制度が与える一人親方への影響と対策

皆さんこんにちは。長野県上田市を拠点に、県内全域で足場工事や仮設工事などを手がけている株式会社ANZENです。


前回は、一人親方は閑散期に苦労するというお話をご紹介いたしました。


https://www.anzen-support.jp/blog/column/132218


加えて今後さらに一人親方を苦境に追い込むと囁かれているのが、2023年から始まるインボイス制度。世間でも多くのフリーランスが、このままでは仕事を失ってしまうと、インボイス制度に反対の声を上げていますが、現在のところ政府は方針を変える様子を見せません。


今回はインボイス制度の導入で、一人親方にとって何が変わってしまうのか、解説します。




■インボイス制度とは?



インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、2023年10月から導入される、新しい仕入税額控除方式です。現在の日本の消費税は、8%と10%が混在しており、消費税の納付額が分かりづらくなっています。インボイス制度の導入により、納付額が正確に計算できるようになります。


インボイス(適格請求書)の発行・保存により、売り手から買い手に正確な適用税率および消費税額等を伝えることで、消費税の仕入税額控除が受けられるようになります。つまり、仕入税額控除を受けるためには、インボイスの発行・保存が必須条件となるのです。


仕入税額控除とは、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引き、納税する仕組みです。また、インボイスとは、現行の記載項目に加え、登録番号・適用税率・消費税額等の記載を追加した請求書をさします。


インボイスを発行するには、「適格請求書発行事業者」への登録が必要です。売り手と買い手の双方がインボイスを発行・保存することで、初めて消費税の仕入税額控除が受けられます。適格請求書発行事業者の登録は、消費税の課税事業者のみが認められています。


消費税の課税事業者とは、消費税の納付義務がある事業者をさします。課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者・1,000万円以下であれば免税事業者と呼ばれます。ただし、課税事業者に登録すると、1,000万円を超えていなくとも納付義務が発生します。




■インボイス制度が一人親方にもたらす影響とは



インボイス制度では、インボイス登録は事業者の任意とされています。このため、インボイス登録を行わなくとも、罰則を課せられることはありません。


しかし、インボイス登録を行わないと、一人親方にとって仕事に不利となる影響が出てしまうのです。具体的な影響とは何かを見てみましょう。



・仕事量の減少

インボイス登録をせず、免税事業者として仕事を受けている一人親方は、消費税の仕入額控除が受けられません。こうなると、元請け側の利益が消費税率分の10%減少してしまうのです。


同じ仕事を発注するのであれば、インボイス登録をしている課税事業者に依頼した方が、元請け側にとって利益の確保につながります。特に大手企業では、事務処理の手間を軽減するために、一律で課税事業者への取引に限定する可能性も指摘されています。


一人親方が、インボイス制度導入後も、免税事業者のまま活動していると、仕事量が減少する可能性があるのです。



・消費税を納める際の事務作業が増える

「インボイス制度とは?」の項で解説したように、一人親方がインボイスに登録し課税事業者となると、年間売上が1,000万円以下であっても消費税の納税義務が発生します。消費税を納付するために、税額計算・領収書保存・記帳作業・納税などの事務作業を自分で行なわなくてはなりません。


税額計算は手間がかかる作業であり、現場作業にプラスして事務作業も行う必要があることから、大きな負担がかかります。事務作業に時間を取られると、現場作業に充てられる時間が減ってしまい、売り上げが減少するおそれもあるのです。




■一人親方がインボイス制度で対応すべきこと



インボイス制度の導入後も、一人親方が受ける影響に対応すべく、以下の対策を取ることが大切です。



・課税事業者か免税事業者のどちらか決める

最初にやるべきことは、課税事業者・免税事業者のどちらを選択して働くかという点です。免税事業者のままでも、これまで通り取引先から仕事の発注を受けられる・取引先の数を増やす予定がないなどの事情があれば、免税事業者でも問題はないでしょう。


ただし、インボイス制度の導入で最も避けたいのは、取引先が減り仕事も減ってしまうことです。取引先から見ても、インボイス導入後に課税事業者であることは、仕事を発注する大きなポイントとなっていきます。仕事を安定的に受注するためにも、課税事業者への登録をおすすめします。


特に、売り上げが1,000万円を超えるか、もしくは取引先から課税事業者になるよう打診を受けている場合には、課税事業者になることでスムーズに取引できます。



・請求書発行など事務負担に耐える体制を整える

インボイスに対応するには、記載項目のルールにのっとったフォーマットで請求書を発行する必要があります。正しいフォーマットで発行するために、システムの導入・改修やテンプレートの利用などを行いましょう。事務作業に時間をかけられない一人親方であっても、短時間で管理可能です。


税額計算の負担を軽減するには、簡易課税制度を利用するのもひとつの方法です。簡易課税制度とは、売り上げが5,000万円以下である中小事業者に対して、みなし仕入率を適用した税額計算が認められる制度です。制度を利用するには、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必須となっています。




■働き方を見直す事もひとつの手です


インボイス制度の導入により、免税事業者のままで一人親方として仕事をしても、課税事業者に転換しても、負担の増加は避けられません。取引先や収入の減少により、事業基盤の再構築を迫られる一人親方も少なくないと言われています。


一人親方として仕事をしてきた経験は、人手不足が深刻化している建設業界で重要な即戦力となります。一人親方から転職をして、正社員になることも選択肢として考えてみませんか。


正社員になると、収入が安定するだけでなく、各種保険や福利厚生なども利用できます。事務処理の手間も軽減でき、仕事に集中できる環境で働けるようになります。



一人親方は、インボイス制度の導入後も今までと同じ働き方を続けるのか、この機会に考え直す必要があるでしょう。はっきりしているのは、インボイス制度は一人親方にとって不利になることです。


もちろんインボイス制度に伴う新たな請求書・領収書の発行・管理に自信がある方や、お金よりも生き方が大事という方は、一人親方のままでもよいかもしれません。ただし、安定して稼げるだけでなく、社会保障などの福利厚生もしっかりしている会社で腕をふるうことを考えてみるのも、不透明な時代を生き抜く一つの鍵と言えるでしょう。


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