皆さん、こんにちは。長野県上田市を拠点に、県内全域で足場工事や仮設工事などを手掛けている株式会社ANZENです。
工事現場で高所作業をする時は、作業者が乗るための「足場」が必要不可欠です。足場は多くの資材を組み合わせて作られ、実際に人が乗る通路・床板に限ってもいろいろな種類の資材がありますが、その1つに「アンチ(鋼製布板)」というものがあります。今回はこのアンチの特徴や種類、取り扱う際の注意点について詳しく解説します。
■アンチとは?
アンチとは、足場内の床部分として使われる、板状の資材の一種です。「鋼製布板」「布板」「床付布板」とも呼ばれています。
足場は単管(パイプ)を組み上げて作りますが、単管だけでは滑りやすい上に落下のリスクが高く、安全に作業することができません。そのため、アンチなどの鋼板を柱と横木の間に設置し、床や通路を作って安全性を高める必要があるのです。
アンチという名前は「アンチスリップ鋼板(アンチスリップメタル)」の略称で、もともとは特定の製品の名称だったものが、一般的な名称として定着しました。鋼板に穴を開け表面に凹凸をつけることで、その名の通り滑りにくくしてあります。この工夫によって、雨天時でも安全に作業しやすいのが大きな特徴です。
また、滑り止め用の穴は通気性も高めており、強い風が吹く高所でも飛ばされたり落下したりしにくくなっています。さらに、左右には建枠(支柱)に引っ掛けるためのフックがついており、他の床材に比べて造りが頑強で重量もあるため、大規模な建設現場でよく使われます。
特にアンチが使われることが多いのが、「枠組足場」と呼ばれるタイプの足場です。枠組足場は建物の外壁面に沿って組まれる足場で、主に高層建築工事で使われ、頑強さや耐風性が求められることからアンチが活用されます。もちろん、一側足場・次世代足場・単管足場といった足場でもアンチは採用され、安全性の高い資材として多くの建設現場を支えています。
■アンチの種類
一口にアンチといっても多くの種類があり、その組み合わせによってさまざまな足場に対応できます。主に「寸法」と「重さ」によって分類されるので、それぞれどのような種類があるのかをみていきましょう。
・寸法による分類
アンチの中でも主流となっているのは、幅400mmのタイプ(ヨンマル)です。ただ、今後は幅500mmのタイプ(ゴーマル)が普及していくとみられています。
その背景にあるのが、平成27年7月に行われた労働安全衛生規則の改正です。この改正では、高さ2m以上の作業場所において、床材と建地(支柱)との隙間を12cm未満とするよう定められました。隙間からの工具や資材の落下事故を防ぎ、より安全な作業を可能にするためです。
そのため、より幅広で隙間を小さくできる「ゴーマル」タイプが、今後の主流となっていくでしょう。他にも、250mm幅や150mm幅といった種類があり、狭小地や一側足場などで使われています。
また、アンチのサイズの規格には「インチ」と「メートル」の2つがあります。枠組足場自体が欧米から輸入された技術のため、一般的なのは欧米で主流となっているインチ規格の方です。一方、日本人にとって馴染み深く、数字の切りがいいのでわかりやすいメートル規格のアンチもあります。
注意しなければならないのは、インチ規格の資材とメートル規格の資材には互換性がないことです。そのため足場を組む時は、どちらの規格の資材を使うのか最初に確認し、規格を統一しておく必要があります。
・重さによる分類
アンチは頑強に作られているため、他の床板に比べて重量があります。サイズやメーカーによっても異なりますが、アンチ1枚の重量は10kg〜16kg程度です。
また、サイズが大きくなれば、当然ながら重量も大きくなります。目安としては、幅500mmで長さが180cmなら16.0kg、150cmなら14.0kg、120cmなら12.0kg程度です。
ただし、軽量なメーカーであれば、幅500mm・長さ180cmのアンチでも14kg台になることもあります。重量は足場を設計する際の重要な要素なので、全体の大きさや求められる強度を考慮し、適切な資材を選ぶことが大切です。
■足場の通路・床板として使われるアンチ以外の資材
足場の通路・床板として使われる資材は、アンチだけではありません。他には「踏板」や「足場板」といった資材があり、状況に応じて使い分けられます。それぞれの特徴やアンチとの違いを確認しておきましょう。
・踏板
踏板はメッシュ素材(エキスパンドメタル)を用いた床材です。隙間が多いため通気性が高く、風の影響を受けづらく、雨水などが溜まる心配もありません。加えて軽量なので持ち運びやすく、アンチと同様にフックで支柱に引っ掛けることも可能です。
こういった特徴から、踏板は比較的狭い場所や小規模な現場の足場で使われる傾向にあります。足場の種類としては一側足場やくさび式足場、現場としては戸建て住宅の建築工事や外壁塗装の際によく採用されます。
なお、アンチの中には踏板と同じくメッシュ素材で作られたものもあり、これを「踏板」と呼ぶメーカーもあるため、混同しないように注意が必要です。主に枠組足場に使われるのがアンチ、一側足場やくさび式足場に使われるのが踏板と覚えておくとわかりやすいでしょう。
・足場板
足場板とは、足場の床部分や通路に使われる、板状の資材の総称です。「歩み板」と呼ばれることもあります。明確な定義があるわけではないのですが、一般的にはアンチのようなフックがついていない床材全般を足場板と呼んでいます。引っ掛けフックのついた足場板=アンチだと考えてもいいでしょう。
主流となっているのはスチール製やアルミ製の足場板ですが、中には木製の足場板もあります。海岸部や高圧線の近くなど、金属製の資材が使えない場所の足場では、木製の足場板を使うのが基本です。この場合は、足場を組むパイプもカーボン製のものを使用します。
■アンチの取り扱いで注意すべきこと
アンチは頑丈で滑りにくいのが特徴の資材ですが、そのメリットは正しく設置・使用してこそ発揮されます。使い方が誤っていると大きな事故につながることもあるので、十分な注意が必要です。アンチの取り扱いの注意点を確認しておきましょう。
・転倒や工具・資材の落下
アンチは滑りにくいのが特徴といっても、絶対に滑らないわけではありません。正しい装備を身につけ、安全に配慮して移動しなければ、転倒してしまうこともありえます。
また、隙間からの工具・資材の落下にも注意が必要です。労働安全衛生規則の改正によって隙間が小さくなり、メッシュシートなどによる対策も施されているものの、落下事故がなくなったわけではありません。
労働災害を防ぐためには、作業員一人ひとりの安全意識が何よりも重要です。「絶対に事故が発生しない足場」というものは存在しないので、常に安全に配慮して作業する姿勢が求められます。
・ブラケットの取り付け方
足場を組む時は、足場材を足場の建地(支柱)に固定するために「ブラケット」という金具を使用します。アンチはフックのついた床板ですが、フックを引っ掛けただけでは外れる可能性があるため、ブラケットによる補強が必要不可欠です。ブラケットの特徴や取り扱いのポイントについては、別の記事で詳しく解説します。
このように、アンチには安全に高所作業をするための工夫が凝らされています。アンチをはじめとする多くの資材を使い、安全性が高く作業しやすい足場を組み上げてこそ、作業員は安心して現場作業に従事できるのです。皆さんも、多種多様な足場に関する知識と技術を身につけ、建設現場を支える足場工事の仕事をしてみませんか?
株式会社ANZENは長野県上田市を拠点に、県内全域で足場工事や仮設工事などを手掛けている会社です。現在、一緒に働いてくれる方を募集しております。
ANZENは創業以来、安全第一の理念のもと、高品質な足場工事を提供してきました。2024年4月からは、労働安全衛生法の改正により、高さ1m以上の高所作業においても本足場の使用が義務化されました。弊社ではこの改正を機に、さらなる安全性の向上に向けて取り組みを強化しています。
また、ANZENでは安全意識の向上を図るため、社員一人ひとりの声を大切にしています。社員が現場で感じた課題や改善点を、積極的に意見として取り入れることで、より安全な職場づくりを実現してきました。
足場工事において、安全は何よりも重視しなければならないポイントです。皆さんも、安全に配慮された環境で足場工事のスキルを磨いてみませんか? 興味のある方はお気軽にご連絡ください。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしております。